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【本】最後の医者は桜を見上げて君を想う/二宮敦人

書名最後の医者は桜を見上げて君を想う
著者二宮敦人
発行年2016年
タグ(ジャンル)文学小説
個人的評価★★★★☆

あらすじ

あなたの余命は半年です──ある病院で、医者・桐子は患者にそう告げた。死神と呼ばれる彼は、「死」を受け入れ、残りの日々を大切に生きる道もあると説く。だが、副院長・福原は奇跡を信じ最後まで「生」を諦めない。対立する二人が限られた時間の中で挑む戦いの結末とは? 究極の選択を前に、患者たちは何を決断できるのか? それぞれの生き様を通して描かれる、眩いほどの人生の光。

引用元:Gooleブックス

読後の感想

 これも先日の「体育館の殺人」と同じく、Amazonプライム会員なら無料だったので読み始めたのだが、2作続けてのヒットとなった。
 内容は、たとえ末期がんでも延命と治療を優先させたい副医院長と、死期が早まっても人間らしく生きて安らかな死を迎えるべきと考える医師の対立という、割りとありがちな設定。但しこの両者は現在は病院内で対立はしているものの、医学部の頃は親友同士。そしてどちらも医療に真摯に向き合っており、副院長が名声と金だけを欲しているという人物でもないので、胸糞悪くなるような医師は出て来ない。
 重い内容だが不快感はないので、安心して手にとって欲しい。

 作品は、中編3本による連作集。そして3本とも終盤は涙腺が崩壊する程度には感動できる優れた物語ばかりだ。
 ただ、読んでいると、あれよあれよと病状が悪化する登場人物のリアルな描写に、息苦しくなってくる。情け容赦なく進行する病魔の辛辣さには、こちらが戸惑いを覚えるほどだ。
 しかも、その患者が二十歳にも満たない女学生だったり、奥さんが第一子を身ごもっているサラリーマンだったりする。昨日まで普通に生活していたのに、突然に病気が発覚し、一気にこれまで夢想だにしていなかった「死」が迫ってくる圧迫感。様々な選択を迫られる患者とその家族。
 お先真っ暗な展開は、読んでいて本当に身につまされる思いだった。

 気になったのは、複数の人物がいる場面で文章の視点がころころと変わるシーンが散見されたことだ。読んでいて誰の視点なのか分からなくなるケースが何度かあり、この辺りは編集者か誰かが指摘して欲しかったなと思う。

 とはいえ、内容の割には必要以上に重くならずに読み進むことのできる稀有な作品だ。
 人の死が題材なので比較的、感動しやすいストーリーだとは思うが、それでも涙なしには読み終えられなかった1冊である。


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