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【本】シェエラザード/浅田次郎

 小学生の頃に江戸川乱歩にハマって以来、読書はずっと続いている趣味のひとつだ。
 ブログを新しくしたばかりでエントリー数が少ないので、しばらくの間、読み終えて面白いと感じた作品はその都度、こちらでご紹介しようと思う。
 つまらない本はスルー。あくまで面白かった本のみ。5点満点なら3点以上の作品のみといったところだ。

 とりあえず今回は、今日読了したこの作品から。『鉄道員』などでも有名な、浅田次郎の『シェエラザード』。上下巻である。

書名シェエラザード (上)(下)
著者浅田次郎
発行年1999年
タグ(ジャンル)文学小説
個人的評価★★★☆☆

あらすじ

 昭和20年、膨大な金塊と二千人を超える人々を乗せたまま、台湾沖に沈んだ豪華船「弥勒丸」。時が流れ、謎めいた中国の老人から、莫大な報酬と引き替えにその船の引き揚げを依頼された者たちが、「弥勒丸」沈没の真実に迫る。

読後の感想

 実際に起った「阿波丸事件」を題材に、元銀行マンや暴力団、財界のフィクサーや大物政治家が、過去の清算をするかのように活動しつつ、小説としては同時進行で当時の「弥勒丸」の模様も、情景豊かに描かれている。過去と現在が交互に読者に提示され、徐々に各々の登場人物や物語がリンクしていく形だ。

 ただ壮大な物語の割には、読後の充実感はそれほど高くはない。浅田次郎の作品としては『蒼穹の昴』のような質と量を伴った内容を期待したが、そこまでの完成度ではなかったかなというのが率直なところだ。
 その最大の要因は、途中でかなりご都合主義な展開があったこともあるが、恐らくは主要登場人物のうちの何人かが最後にどうなったのか、きちんと描かれていないからだと思う。
 純文学ならそれもアリだとは思うが、あくまで娯楽小説としては「結局あの人はその後どうなったのか?」といった消化不良の要素は、絶対に省くべきである。
 その辺りが、例えば福井晴敏『亡国のイージス』『終戦のローレライ』などの作品の読後感と、大いに違ってしまった点だろう。伏線が回収されないまま終わってしまったような、どうにもスッキリしない物足りなさが残る。

 とはいえ、水準以上の作品であることは間違いない。上巻では少し冗長な流れもあったが、終盤はノンストップで読まざるを得ないリーダビリティだったし、何よりも最後まで退屈せずに読めた。
 他人にオススメできるかと問われたら、自信を持ってYESと答えられる。ただ、スケールの大きな小説としては、前述の福井晴敏『亡国のイージス』や、圧倒的な取材力と筆致で綴られた高村薫『リヴィエラを撃て』、山崎豊子『大地の子』などの完成度には、残念ながら及ばないかなとも思う。
 いや、まあでも、色々と考えされられる内容でもあったな。読んで良かった。


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