書名 | 愛と悔恨のカーニバル |
著者 | 打海文三 |
発行年 | 2003年 |
タグ(ジャンル) | ミステリー |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
姫子が恋したのは破滅へと疾走する美しい男の子・翼。アーバン・リサーチの探偵・佐竹が翼を追う。浮上する連続猟奇殺人事件。耳を削がれた死体は何を物語るのか。残酷な恋とインモラルな性を清冽に描く。
引用元:Google ブックス
読後の感想
読み始めて早い段階で、何だか聞き覚えの名前が出てきたなと思ったら、昨年読んだ 「時には懺悔を」 と同じシリーズだった。このブログでも紹介していた。
ちなみに最後まで読み終え、巻末の解説ではじめて知ったのだが、本作と上記の 「時には懺悔を」 の間にもう1作あり、その物語の主人公の女の子が、本作でも主役を演じているようだ。
女の子と探偵事務所のスタッフたちの関係が親密なのに、それについての説明がほとんどないのを不思議に思って読み進めたが、単に前作で描かれていただけだったのだろう。どうりでおかしいと感じるわけだ。
順番が前後するが、その前作も近いうちに読んでおこうと思う。
で、この作品である。青春学園もののような表紙とは裏腹に、内容は陰惨でインモラルなものだった。エグい性描写や猟奇的な殺人が事細かく書かれることはないが、それを連想させる場面は出てくる。
ただしお先真っ暗なストーリーの割には、文体はそれほど陰々滅々ではない。最終的には多くの人物が出てくることになるが、それぞれにきちんとキャラクターが付いていて、頭がこんがらがる事もない。
何より、次々と先を読みたくなるリーダビリティがあった。登場人物たちの突飛な行動と思考に、読んでいて戸惑うことも少なくなかったが、圧倒的にストーリーの面白さが勝っていた。
なお中盤以降、事件の進展よりも、少し精神的な動機などを読者が嗅ぎ取るよう強いるシーンもある。文章ではっきりとは明言しないが、読者が勝手に頭の中で内容を推理しなくてはならないような、そんな流れだ。
それを煩わしいととるか、行間を読むのが好きなのかによって、本作への評価も変わってしまうかもしれない。ただし決して難解ではなく、ふだんミステリーばかり読んでいる身にも容易に理解できる心理描写なので、安心して読んでみて欲しい。
破滅に向かって突き進んでしまう男女というのは、昔から映画などでもお馴染みだが、そうした内容に嫌悪感を抱かない人は、一度この作品も読んでみられたらいかがだろうか。
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