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【LP聴き比べ】カーペンターズ 3種

 先日ふと見つけた、カナダで編纂された CARPENTERS のベスト盤を購入した。彼らのオリジナル・アルバムはUS盤を2枚持っているので、折角なので久しぶりに聴き比べをしようと思う。
 まずは今回新たに購入したベスト盤のご紹介から。

THE CARPENTERS COLLECTION/カーペンターズ

アーティストCARPENTERS
タイトルTHE CARPENTERS COLLECTION
カタログNo.TVLP 78041
プレス国カナダ
A面ランアウトTV 78041-A P TLC
B面ランアウトTV 78041-B P TLC
C面ランアウトTV 78041-C P TLC
D面ランアウトTV 7̶4̶ 78041-D P TLC

 CARPENTERS はレコードを買うようになってから、格段に聴く機会の増えたアーティストのひとつだ。
 昔から嫌いではなかったが、特に好んで聴いていた時期もなかった。レコードを聴くようになってから、その円やかな楽曲や雰囲気がアナログと相性が良いことに気がついて、好んでターンテーブルに乗せるようになった。
 ただ、レコードがCDやサブスクと比べ圧倒的に劣る「曲飛ばしが出来ない」というデメリットが、CARPENTERS のLPを聴いていると如実に感じるようにもなった。ファンの方には申し訳ないが、個人的には彼らのアルバムには退屈な曲も多く、曲飛ばしの出来ないことに大きな不満を覚えるのである。
 そんな中、ひょんなきっかけで Discogs で的を射た選曲のカナダのベスト盤を見つけた。

 個人的には、CARPENTERS の中で好きな曲を5つ挙げると、次のようになる。

  1. A Song for you
  2. Yesterday Once More
  3. I Need to be in love
  4. Goodbye to Love
  5. Top of the World

 このうち、2と5は概ねどんなベスト盤を選んでも収録されているだろう。
 問題は1、3、4だ。これらが揃って収録されているベスト盤は、実はかなり少ない。以前、日本盤ながらすべてが収録されたベスト盤があったので購入したが、あまりに眠い音だったので繰り返し聴く気にならず、売り払った経緯がある。
 さらに気をつけなければならないのが、2 「Yesterday Once More」 だ。彼らの代表曲だが、オリジナル・アルバム 「NOW & THEN」 ではB面をすべて使ったメドレーの頭に配置されており、曲がフェードアウトしていく途中で次の曲のイントロとしてバイクのエンジン音などが重なって入ってくるのである。
 折角の名曲の余韻に浸る間もなくエンジン音を聴かされるなんて実にゲンナリなのだが、このメドレーが丸々収録されているベスト盤も少なくない。
 このメドレー自体があまり好きではないので、メドレーでの収録ではない 「Yesterday Once More」 を含めた上記1〜5の曲を網羅するベスト盤を探すと、Discogs で探しても見当たらなかった。
 ただ、「Goodbye to Love」 は収録されていないものの、カナダで企画された2LPのベスト盤が割と良い選曲だったので、今回わざわざ海外から購入した次第である。
 送料込みで4千円弱。中古レコード市場で安売りの常連である CARPENTERS のLPとしては高価だが、まあ仕方ないと思うことにした。

 商品は少し前に無事に届いたが、写真の通りジャケットは実にチープ。さらに2枚組にもかかわらず、ゲートフォールドジャケットでもない。やや強引に2LPを詰め込んでいる。
 ちなみにこのベスト盤は1978年に発売されたものなので、当然リマスターなどは施されていない。加えて本国US盤ではなく、カナダ独自の編集盤なので、ポチる前から音質に過度の期待はしていなかったが、届いたLPを聴いてみると悪くはないサウンドだった。以前所有していた日本盤のように、驚くほど鮮度の低い音だったらと危惧していたが、最低限のクオリティはクリアーしているのでホッとした。
 で、どうせならとUS盤のオリジナル・アルバムと聴き比べてみたので、次にその結果を書き記したい。

BEST盤 vs 「SONG FOR YOU」

 所有している 4thアルバム 「A SONG FOR YOU」(US盤)は1stプレスではないが、それなりに初期のリプレス(写真右)だと思われる。
 聴き比べに使ったのはオープニングの2曲、「A Song for you」 と 「Top of the World」 だ。

 US盤は一聴して、鮮度が高く、色彩が豊かだと感じられる。歌声も、そして 「A Song for you」 の間奏で聴かれるサックスの音色も実にリアルで、すぐ側で演奏されているかのようだ。特にサックスは、本来の音の周りに漂っている空気感もレコードに刻まれているような趣きである。
 「Top pf the World」 も、カレン の歌声が前面に出ていてリアルだ。
 ただコーラスにややザラつきが感じられ、少し美しさが損なわれているようにも感じた。

 続いてカナダのベスト盤。
 US盤に比べると乳白色にボヤけたような音像だが、それが優しく耳に響くので、「A Song for you」 に関しては、これはこれで悪くないとも思えるサウンドだ。
 また全体的にオーケストラを含めたバックの存在感が大きい。US盤の方がメリハリの効いた音で、カナダ盤はサックスのソロパートが少し埋もれた印象になるのが勿体ないと感じた。
 そして 「Top of the World」 は、バスドラが「コンコン」とどうしようもなくチープな固い音で、かなり耳障りだ。コーラスなどはUS盤よりこちらの方が広がりがあって美しいだけに、バスドラの「コンコン」は実に残念である。

 トータルで判断すると、音質的にはやはりUS盤が上だが、カナダのベスト盤もそれほど悪くないといった感想になった。

BEST盤 vs 「NOW & THEN」

 この 5thアルバム 「NOW & THEN」 は、USオリジナルである。
 聴き比べに使ったのは、「Yesterday Once More」。

 まずはオリジナル・アルバム 「NOW & THEN」 から聴いた。
 さすがの鮮度で、ボーカルもハイハットの音もとんでもなくリアルだ。前作 「A SONG FOR YOU」 と比べて録音状況そのものが極めて良好だったことが伺える。ピアノやコーラスの響きも実に美しい。
 ただすべての音が鮮やかなので、カレン のメイン・ボーカルが少し埋もれてしまうように感じなくもない。
 そして先に述べたようにこのオリジナル・アルバムではメドレー形式となっているので、ポピュラー音楽史に残るこの名バラードのフェードアウトに被さるようにバイクの音が入ってくるのが、かえすがえすも残念だ。

 次にカナダのベスト盤。
 USオリジナルと比べると分離が悪く、すべての音がゴチャっとしてスピーカーから出てくる。
 いわゆるナローレンジな印象で、奥行きがなく平坦、さらにベースが聴こえにくく、なんだか昔のシステムコンポで聴いているかのようだ。
 曲の良さに誤魔化されて不満なく聴けるが、実際に聴き比べればUSオリジナルの圧勝である。

 あと今回、比べてみて気づいたが、「Yesterday Once More」 に関しては、このベスト盤とオリジナル・アルバムで少しミックスが違うようだ。
 分かりやすいのは、サビの最後の “Just like before、It’s yesterday once more” と歌われる部分。
 オリジナル・アルバムのほうは “Just like before” と “It’s yesterday once more” の間にピアノが聴こえるが、 ベスト盤ではオルガンのような音色で違うフレーズが流れる。
 ベスト盤のほうはシングル・バージョンであるとか、そうした微妙な違いがあるのかもしれない。(実際には知らんけど)

 ということで聴き比べた結果は、やはり本国アメリカでプレスされたオリジナル・アルバムのほうが、音質的には上という結果になった。特に 「NOW & THEN」(Yesterday Once More) に関しては、かなりの差がある。
 とはいえアナログレコードの場合、すでに述べたように捨て曲が少ないというのは圧倒的な利点だ。
 それを考慮すると、実際に聴く機会が多くなるのは今回購入したベスト盤だと思う。以前に購入した日本盤ほど眠たい音でもないし。少なくとも買って後悔はしていない。


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