先々月、ラックスマン のプリメインアンプ『LX-32u』の中古品を購入した。
ここ数年は、マッキントッシュ の『C32』というコントロールアンプと、パワーアンプ『MC2155』を愛用してきたので、久しぶりのプリメインアンプになる。
今回はこのことについて書き残してみたい。
購入した理由
特に強い理由があって購入した訳ではなく、いくつかの小さい理由が集まった結果、導入に至ったようなカンジだ。
その小さい理由を挙げてみると、まずはリモコンが欲しかったこと。
以前に McIntosh『C41』を購入した際の下記エントリーでも書いた通り、ヴィンテージアンプ『C32』の唯一の不満は、リモコンがないことだ。
結局、上記の『C41』は音質に満足できず売り払ってしまったが、やはりリモコンで音量調節できるのは、実に便利だった。
ということで、リモコンに対する渇望が1つ。
次に、真空管アンプを使ってみたいという漠然とした欲望もあった。
これまで真空管アンプは一度も所有したことがない。以前から興味はあったが、ジャズを聴く上で McIntosh のセパレートアンプと JBL のスピーカーで何の不満もなかったことから、大枚はたいて新たなアンプを買おうとまでは思わなかった。
しかしこの6月に、スピーカーを TANNOY『ⅢLZ Monitor Gold』 に買い替えたことで俄然、真空管アンプへの興味が再燃したのである。
TANNOY スピーカーと真空管の相性は、比較的良いとされている。
上記エントリーでも書いた通り、将来的には確実に「McIntoshアンプ + JBLスピーカー」に戻るので、それならば TANNOY『3LZ Monitor Gold』を使っている間に、真空管アンプも試してみようと考えた次第である。
主な理由としては、この2つだった。
LUXMAN『LX-32u』を選んだ経緯
こうしてリモコン付き真空管アンプを探し始めた。予算は20〜30万円程度。
新品としては LUXMAN『SQ-N150』か、Triode『TRV-88SER』『TRV-A300XR』あたりになる。
実は一度、Triode の真空管アンプを買おうと思ってヨドバシカメラまで出向いたのだが、試聴させてもらうと想像していたようなノスタルジックな音ではなく、雑味の少ない見通しの良いサウンドだった。正直なところ、求めている音とは少し違っていた。
そこで LUXMAN『SQ-N150』も聴かせてもらうと、こちらの方が好みの音ではあったが、見た目が可愛すぎて、何となく買うのをためらってしまった。リモコンが別売りで、しかもその音量調整しか出来ないリモコンが1万円以上という価格だったことも、躊躇した要因だったと思う。
結局、購入するつもりで訪れたヨドバシカメラから、手ぶらで帰ってくることになった。
そして改めて、中古品なども視野に入れて探し始めた。
とはいえ、リモコン付きに限定すると、当然ながら70年代製造などのヴィンテージ・モデルは除外されるので、選択肢はあまりない。リモコンがあって、真空管アンプで、20〜30万となると、なかなか見つからないのが実情だ。
そんなときにようやくネット上で見つけたのが、LUXMAN のプリメインアンプ『LX-32u』だった。
2013年に発売されたモデルで、もちろんリモコン付き。フォノイコライザーはMMだけでなくMCカートリッジにも対応している。
トーンコントロールも、バス/トレブルの2つだが、それぞれ3段階のターンオーバー周波数を切り替えられるようになっており、これまでの McIntosh『C32』の5バンドイコライザーに比べると使い勝手が悪いが、近年のプリメインアンプとしてはマシな方だろう。
また見た目も、木箱に入ってレトロ感があり、個人的には好みである。
ただこのアンプは、パワー部は真空管式だが、プリ部はソリッドステート型だ。声高に「真空管アンプだ」と言える機種ではない。
しかし大きすぎないサイズや、必要な機能だけが装備された仕様など、我が家にピッタリのモデルだったので、試しにこれを買うことにした。
ちなみに販売していたのはオーディオ専門店ではなかったが、オーディオも含めた中古品を幅広く扱っている業者だった。一応、保証も付いているようだし、ヤフオクやメルカリ等で購入するよりは安心できると考えたのも、購入に踏み切った一因だったと思う。
Luxman『LX-32u』レビュー
これまでの McIntosh のプリ『C32』より、プリメインである LUXMAN『LX-32u』のほうが、サイズはひと回り大きい。しかし重量は前者のほうが上だ。
また前述した通り『C32』には5バンド・イコライザーが付いていたが、『LX-32u』は 「TREBLE」 と 「BASS」 だけの簡易型である。『C32』のイコライザーは非常に優秀で、またRIAAカーブではないと思われるLPレコードをかける際にも重宝していたので、ここは買う前から分かっていたものの、やはり少し残念には感じた。
ただいちばん大事な音に関しては、想像していたよりずっと良かった。
コクのようなものがもっと薄れて、現代的なスッキリしたサウンドになってしまうことを危惧していたが、ヴィンテージっぽい艷やかな音色や色気を吐き出してくれる。
例えばジャズに関しては、やはり「McIntosh+JBL」には敵わないが、スピーカーが TANNOY ということもあってか、女性ボーカルなどはこちらのほうが好みだ。ドキッとするほどリアルだし、音源にもよるがシンガーの唇が目に浮かんでくるような曲もある。耳で聴くというよりは、身近に気配を感じるといった音だ。
これは嬉しい誤算だった。
近年のアンプにしては、ルックス通り少し古臭い音を出してくれるのである。
さらにアナログ・レコードを再生する際にも、MC/MM両方のカートリッジに対応しており、前面のレバー1つで変更が可能だ。
従来の McIntosh『C32』はMMカートリッジにしか対応していなかったので、MCの場合はプレーヤーとの間に昇圧トランスを接続しなければならず、いちいち着脱が面倒で、ずっとMCカートリッジばかりを聴いていた。しかし今回、LUXMAN『LX-32u』に変わったことでアンプ側の切り替えは瞬時にできるようになり、しばらく遠ざかっていたMMカートリッジも堪能しているのが現状だ。
旧ブログでも何度か書いた通り、ジャクソン・ブラウン 「LATE FOR THE SKY」 などは Oftofon『OM10』というエントリーモデルのショボい音のほうが感動できるし、ジャズ作品なら SHURE『V15 TYPE3』のほうがMCカートリッジよりエネルギッシュな演奏を聴かせてくれる場合もある。
LUXMAN『LX-32u』の購入によって、作品にあわせてMC/MMの使い分けが容易になったのは、実にありがたい。
こうした様々な方法で好みの音色を追求できるのはアナログの強みでもあるので、その意味では理想のシステムに近づきつつあるのかもしれない。
さらに当たり前だが、やはリモコンは便利だ。
このアンプのリモコンは、音量の上下とミュートの3つしかボタンがないが、音量はかなり細かいレベルで調整ができるので、使い勝手は非常に良い。
入力端子は4つと、現代では不足することのない適度な数だし、レコード調整の際に重宝するモノラルへの切り替えスイッチもある。
また今のところ使う予定はないが、プリ部とパワー部を切り離して、パワーアンプとして使用するセパレート機能も搭載されている。
このアンプを購入してから約2ヶ月が経つが、現時点で満足度はかなり高い。前回リモコン欲しさに マッキントッシュ『C41』買ってすぐに売り払ったのとは、雲泥の差だ。
ラックスマン のアンプを購入したのは今回が初めてだったが、なるほど根強いオーディオファンがいるのも納得の製品だと感じる日々である。
こうなると一旦、押し入れに眠ってもらっている マッキントッシュ のセパレートアンプを、果たして持ち続けていくべきかどうか迷ってしまう。
JBLスピーカーに戻ったときのために保管しておくつもりだったのだが、ラックスマン『LX-32u』がこう優秀だと、押し入れの肥やしにしておくくらいなら、いっそ売り払ってしまうのも一考に値するだろう。それなりの値段で引き取ってくれる筈だし。
ただジャズに関しては、やはりマッキン・アンプのほうが上だったことも確かである。
なんとも贅沢な悩みが出てきたもんだ。
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