先月の 『2022 RECORD STORE DAY』で購入したうちの1枚、アート・ペッパー の 「Meets the Rhythm Section」。
せっかくなので、以前から所有しているUS盤リイシューと、聴き比べしてみた。
RECORD STORE DAY 2022(MONO)
このLPのひとつのウリは、モノラルであるという事だ。現在、市場に出ている本作は多くがステレオ盤で、モノラルの再発はかなり久しぶりらしい。
さらにオリジナルのMONOテープから、すべてアナログでマスタリングが行われているとの事。
大いなる期待を持って針を落としたが、第一印象としては音が軽いと感じた。密度が薄いと表現してもいい。特にスネア・ドラムなどは、軽くてペラペラだ。
さらに、演奏に熱さも感じられない。まるでリハーサルかのような雰囲気で、リラックスして聴けるとも言えるが、ここは好みが分かれそう。
ただ、アナログらしい柔らかさは確実にあるし、音量を上げればアルト・サックスの音色にも艶が出てくる。
また、以前から本作のステレオ盤は中抜けが気になるという指摘が少なくなかった。各楽器が左右に極端に振られることで、センターに定位する音が少なすぎて、違和感があるという意見だ。
個人的にはあまり気にならないが、そういう方には今回のモノラルでの再発は、非常に価値が高いといえる。
ただ率直な第一印象としては、かなり微妙に感じた。
US再発盤(S7532)
お次はUSリイシュー盤。Discogs で調べる限りでは、73年ごろのプレスのようだ。重苦しさがなく、軽快で艶のある音が聴けるので、割と気に入っている1枚である。
で、上記の 『2022 RECORD STORE DAY』盤の後で聴いてみると、確かに中抜けともいえる仕上がりだ。サックスのみ左にパンニングされ、他のドラム・ベース・ピアノはすべて右に振られている。この偏った割り振りは、確かに極端ではある。
ただ同時に、軽快な演奏の中にも芯が感じられる、色彩豊かなサウンドであることも事実だ。オープニングの 「You’d be so Nice to Come Home to」 のアルト・サックスが入った瞬間に、良い音色だなと感じる。
決して高価な金額で入手した盤ではないが、これで十分と思えるサウンドである。
比較まとめ
といった具合に2枚のレコードを聴き比べしてみたが、聴き終えてから思い出したことがある。それは(あくまで私個人の経験則だが)新品LPはなぜか初めて針を落としたときは眠い音がして、2回目に聴くときのほうが魅力的な鳴り方をする盤が多いということだ。
(繰り返すが、あくまで私の実体験としては、そう感じることが多いという話である。特に根拠や裏付けるデータはない)
ということで、もう一度はじめの新品LP(RECORD STORE DAY 2022)のほうを聴いてみた。
するとやはりと言うか、最初に聴いたときのような軽さや薄さが消え失せ、しっかりとした密度の高い音がスピーカーから出てきた。
やっぱりかーと思いながら、そのままA面を最後までかけてみた。
うん、なかなかの音である。オール・アナログでのマスタリングというのも十分にうなずける。特に音量を大きめにすれば、もう1枚のUS盤を超えるガッツのある音として耳に届く。
こうなってくると、両者の音質的な優劣はなくなってしまった。どちらを選んでも、失敗はない。
ただし根本的に、モノラルとアナログという絶対的な違いがある。
つまるところ、両者の差はそのどちらを選ぶかという好みの差でもある。
ガツンとすべての楽器が塊となって出てくる音が好きなのか。もしくはアルト・サックスの音色を単体で聴き分けることの出来るサウンドのほうが良いのか。
付け加えるならば、音量が一定以上であればRSD2022盤、通常ボリューム以下であればUS再発盤(S7532)のほうが良いと、個人的には感じた。
聴くときの気分次第で決める形で良いだろう。どちらもクオリティは高い。
ただ当然ながら、新品LPはやっぱりチリパチノイズがないので、快適ではある。
↓ コメントはこちらへ ↓