書名 | 瑠璃の雫 |
著者 | 伊岡 瞬 |
発行年 | 2011年 |
タグ(ジャンル) | ミステリー |
個人的評価 | ★★★★☆ |
あらすじ
母と弟の3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母のアルコール依存によって、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、あまりにも哀しい真実を知る。家族とは何か。赦しとは何か──。
引用元:KADOKAWAオフィシャルサイト
読後の感想
相当な力作だった。
三部構成で、第一部は幸福とは言えない家庭に育つ少女の独白による、重苦しい成長記。
このまるで純文学小説のような第一部から、一気にミステリーとサスペンスが色濃い第二部に突入し、謎と伏線が回収される第三部に至って、物語は大団円を迎える。
序盤は、不幸な家庭環境から心を閉ざした少女の生い立ちが描かれてやや退屈だが、この第一部の終盤から第二部・第三部にかけては怒涛の展開が待っている。かなりの文量だが強烈なリーダビリティで、なかなか読むのを止められない。寝る間を惜しんでページをめくることになるし、同時にあまり小刻みに読んでしまっては、ちょっと事実関係がこんがらがるような作品でもあった。
登場人物たちの人間関係が突然変わっていて戸惑ったり、主人公の少女の言動に共感できなかったりしたシーンが何度かあったので、星1つ減らしたが、そうした欠点を補って余りある質量である。
多くの人に読んで欲しいと思える1冊だ。
↓ コメントはこちらへ ↓