書名 | 時には懺悔を |
著者 | 打海文三 |
発行年 | 1994年 |
タグ(ジャンル) | ミステリー、ハードボイルド |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
佐竹は、数年前に退社した大手の探偵社アーバン・リサーチの元上司・寺西に頼まれ、探偵スクールのレディース一期生・中野聡子の代理教官をすることになる。その日の実習は、やはりかつての同僚・米本の探偵事務所に盗聴器を仕掛けることだったが、事務所に忍び込むと、そこには米本の死体が転がっていた。佐竹は中野を助手に、米本が殺された謎を調査していくが、やがて過去に起きた障害児の誘拐事件の真相に迫っていくことになる……。
引用元:KADOKAWAオフィシャルサイト
読後の感想
内容としてはハードボイルド小説だが、例えばチャンドラーのような捻くれた文体ではなく、一人称で語られる作品でもなかった。個人的にはハードボイルドはやはり一人称で、あくまで主人公の目を通して語られる小説が好みではある。
とはいえ、それなりにシュールなシーンはあり、また登場人物たちがきちんと個性を持って描かれているなど、決して水準以下の作品などではない。特に「ウネ子」という初老の女性アシスタント(探偵事務所の営業)などは、のっけから顔形が目に浮かぶような、際立ったキャラクターと存在感を放っている。
内容としては、冒頭から同業である探偵の死体を発見するシーンから始まるのだが、捜査を進めるうちに障害児が絡み、やや社会派小説のような趣きも内包した作品だ。タブーに触れるとか、そんな大げさなことではなく、障害者を子供に持った親たちの生活や苦労、苦悩などが、必要以上に悲観的にならずに語られている。読んでいると重いものがどんどん心に蓄積していくが、それが不思議と不快には感じない、少し珍しい小説だった。
ミステリー作品としても、それほど大きな謎のようなものはなかったが、それでも終盤はページをめくる手を止められないし、充分な読み応えがあった。
繰り返すが、読んでいて心が痛んだり辛くなるような作品ではないので、身構えず安心して手にとって欲しい。
でも欲を言えば、一人称の文体で読みたかったかな。
↓ コメントはこちらへ ↓