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【本】夜の海に瞑れ/香納諒一

書名夜の海に瞑れ
著者香納諒一
発行年1992年
タグ(ジャンル)ミステリー、ハードボイルド
個人的評価★★★★☆

あらすじ

癌に冒された老ヤクザを故郷の淡路島まで運べ。舞いこんだ依頼はたやすいはずだった。だが、謎の追手の襲撃によって、老人と親友が拉致される。しかも、その老人は、五十年以上前にシベリアの捕虜収容所で、凍土に葬られたはずの男だった。組織を裏切った老ヤクザの本当の狙いは何か。殺し屋、ロシアンマフィア、そして日本の闇権力の陰謀と裏切りが交錯しあう中で、探偵碇田が執念の追跡の果てに見たものは……? 過去の傷痕に引きずられ、闇に蠢く男たちの吐息。信義なき世界でぎりぎりの誇りを全うする孤独な闘いを、壮大なスケールで描き切る、冒険小説!

引用元:KADOKAWAオフィシャルサイト

読後の感想

 一人称で語られる文体、どんどん複雑化するストーリー、冒頭から読者に満足な説明なく進行する場面展開と、紛うことなきハードボイルド小説。
 個人的には香納諒一は、原寮、志水辰夫に継いで好きな日本人バードボイルド作家だ。両氏に比べれば主人公の視点は冷酷ではないし、ひねくれてもいないが、それでも十分にハードボイルドの魅力が味わえる。
 主人公こそやや凡庸だが、他の脇役たちはきちんとキャラクターが確立していて、いずれの登場人物も顔が目に浮かぶようだ。読み進むと、人物関係がどんどん絡まり、少し頭が混乱するが、それもまたこれらの作品の典型であるともいえる。
 とにかく一人称での文章というのは主人公の視点でのみ描かれるので、謎解きに必要な情報は概ねすべて読者に提示されるている。それでもアッと驚く展開が待っているのだから、優れた作品というのは本当に唸らされる。
 加えて必然的に物語は時系列で語られ、良くも悪くも淡々と話が進む。
 でもこれこそがハードボイルド小説の醍醐味である。本作では久しぶりに、その愉しみを味わえた。


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