書名 | 開かせていただき光栄です |
著者 | 皆川博子 |
発行年 | 2011年 |
タグ(ジャンル) | ミステリー小説 |
個人的評価 | ★★★☆☆ |
あらすじ
18世紀の英国ロンドン。まだ解剖学が偏見に晒されていた時代に、外科医の解剖教室で師と弟子たちが直面した正体不明の死体をめぐる事件。顔のない死体と、両手両足を切断された少年の死体。そこにあってはならない死体から始まった謎解きに、師と弟子と盲目の治安判事が挑む。
読後の感想
奇妙なタイトルに導かれるかのように、奇妙な始まり方をする作品である。
とにかく始めの2章が、「一体いま何を読まされているのか?」と困惑するほどの淡白さ。
さらにオープニングから登場人物が多めで、覚えるのが大変だ。18世紀のロンドンにある、外科医の解剖教室がメインの舞台で、師である外科医ひとりに対し、冒頭から弟子が5人登場する。
そして読み進むと、解剖教室の中で死体が発見されるのだが、その死体が解剖用に置いてあるものなのか、弟子たちも覚えのない他殺死体なのかも、読んでいて今ひとつ分かりにくい。
正直なところ、序盤はもう読むのを止めようかと迷いながらページをめくっていた。
場面転換が少なく、多くが会話で進行するため、まるで舞台芝居を観ているような作風だ。
ところが辛抱して読んでいると、何だか知らないうちに事件が発生していて、謎もしっかりと読者に提示され始める。
そこからはもうエンディングまでノンストップ。謎が少しずつ解明されようとしても、それ以上に不可解なことが次々と新たに現れる、ミステリー好きには堪らない展開だ。
始めは翻訳モノのようで読みにくかった文体にも慣れ、適度にあっと驚くような場面をいくつか挟まれたことで、グイグイと引っ張られてしまった。
確かに全体を通して読みやすい作品とは言い難い。細かい伏線がいくつも張り巡らされているし、一気に読み進めないと話がつながらないような描写も多々ある。よく言えば緻密だし、悪く言えば少々分かりづらい。ある意味、読書慣れしていない人にはオススメできない一冊かもしれない。
ただし水準以上の作品であることは間違いないだろう。ご興味のある方はどうぞ。
↓ コメントはこちらへ ↓