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【本】図書館の殺人/青崎有吾

書名図書館の殺人
著者青崎有吾
発行年2016年
タグ(ジャンル)ミステリー
個人的評価★★★★☆

あらすじ

期末試験中のどこか落ち着かない、ざわついた雰囲気の風ヶ丘高校。試験勉強をしようと学校最寄りの風ヶ丘図書館に向かった袴田柚乃は、殺人事件捜査のアドバイザーとして、警察と一緒にいる裏染天馬と出会う。男子大学生が閉館後の図書館内で殺害された事件らしいけど、試験中にこんなことをしていていいの? 閉館後に、山田風太郎の『人間臨終図巻』で撲殺された被害者は、なんとなんと、二つの奇妙なダイイングメッセージを残していた……。“若き平成のエラリー・クイーン”が満を持して贈る第三長編。
“館”の舞台は図書館、そしてダイイングメッセージもの!

引用元:東京創元社オフィシャルサイト

読後の感想

 昨年末に読んだ青崎有吾氏のデビュー作 「体育館の殺人」 は、個人的には5年ぶりに星5つを進呈した作品だった。

【本】体育館の殺人/青崎有吾
青崎有吾著 「体育館の殺人」 の読後感想

 ただ2作目となる 「水族館の殺人」 は、力作ではあったものの、読んでいて消化不良になったり面倒になったりといったことがあり、このブログでとり上げる必要はないと判断した。

 で、その後の(短編集を挟んで)長編3作目となる本作 「図書館の殺人」 である。これは面白かった。
 1作目には遠く及ばないが、それでも十分なクオリティであり、相変わらずラノベ調でコミカルな場面を挿入しながらも、内容的には紛うことなき本格探偵小説である。
 登場人物は1作目2作目を踏襲しているので、このシリーズは始めから順番に読み事を強くオススメするが、とにかく本格推理に飢えているミステリーファンにはまたとない作品である。

 とはいえ不満がない訳ではない。やや強引な決めつけが気になるし、「必ずしもそうはならんやろ」と思える推理の筋道にモヤモヤする。前作ほどではなかったが、これは本作でも少なからず感じた。
 しかし何より本作の最大の不満は、動機である。
 終盤、犯人が読者に提示されたとき、何かしら深い動機があってのことなのだと考えて、それがどんな秘められた理由なのかを楽しみに読み進めた。ところが実際には特に深い理由もなく、「え?そんな事で殺人を犯す?」という些細な動機がさらりと語られるだけで終わってしまった。
 犯人と被害者の関係を考えても到底、納得のいく動機ではないし、恐らく多くの人が同様に感じるであろう稚拙な解釈だった。
 動機に重きが置かれないのは、古くからの推理小説の悪しき習慣だが、残念ながら本作もそれを踏襲してしまったようだ。

 とはいえ、完成度としては極めて高いクオリティだ。前作のように序盤が退屈になるようなこともなく、また登場人物たちの漫才のような掛け合いも悪くない。
 そして本作で初めて登場し、重要な役割を演じる図書委員長の女子生徒。物静かで地味なのに存在感があり、何となく応援したくなるキャラクターだった。
 とにかくこのシリーズの女子生徒の描き方は、脇役に至るまで実に秀逸だ。顔が目に浮かぶように活き活きとしていて、この作品群が青春小説という一面があることを教えてくれる。
 ご興味のある方は、ぜひ1作目からどうぞ。


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